こぼればえ⑥「還るところ~馬蝗絆に接して」
2020.05.14
こんな時代だからこそ本源・本質・本来的なことを思い返そう、
見直そうという声を聞きます。
最近友人から譲ってもらった古伊万里の柿右衛門手の江戸中期と
思われるお皿。
松竹梅それぞれが奔放に枝を伸ばして花や葉が彩り豊かに描かれ
ているのにどこか寂しさが漂う色絵です。
ただこのお皿の見所は入(割れ目)に対して「馬蝗絆(ばこうはん)」
という修理が施されている点です。
入の傷がこれ以上拡がらないように両側に穴をあけてかすがいで
止めてあります。堅い磁器に当時どのようにしてこの金属を打ち
込める事が出来たのか…。東京国立博物館蔵の青磁茶碗はあまり
にも有名ですが、こうして手元に馬蝗絆技法で修理というより加
飾されたモノを見ると、修理した職人の技の凄みと同時にモノを
大切に慈しみ美しいかたちで使い続け、伝え残してきた先人の想
いが心に響いてきます。
ここにひとが還るべき本来的なモノの姿が映し出されているような
気がしてなりません。